DHGレトロソフトフィルターの表現世界2
2021.02.10
Cinema・Nostalgic
–DHGレトロソフトフィルターの表現世界–
想いを込めて映像を創りたい、そう思われる方へ格好の処方箋となりますように。
ご覧いただいたのは、映像作家、浅田 譲による、マルミWebSiteのための撮りおろしムービーである。
音源もオリジナルだ。モバイルで視聴されている方は是非ヨコ画面にしてご覧いただきたいと思う。
本映像制作には、marumi Creation Variable ND 2.5-500とmarumi DHGレトロソフトフィルターが使われている。
それぞれのフィルターがこの映像制作にどんな効果を及ぼしているのか、ここでは考えて行く。
Creation Variable ND 2.5-500について
Creation Variable ND2.5-500が使われる理由は、映像撮影が、いわばシャッタースピード優先撮影だからに他ならない。
映像を構成するときには、一秒間を何枚の画像で構成するかを、目的によって決めて行く。
一秒間を構成する画像の枚数をフレームレートといい、fps (frame per sec.) という単位であらわしている。
さて、これらの映像をシームレスな動きとして記録するためには、シャッタースピードに気を付ける必要がある。
一般的には、最適なシャッタースピードは、
または
1/2×fps数と言われている。それ以上早いシャッタースピードでは、画像がスムーズにつながらず、チラチラして見にくい。
https://www.marumi-filter.co.jp/filterabc/abcmovie/
この日のロケは強風の中、僅かな晴れ間を縫って行われた。このような風が強い日は、モデルの衣装や髪、花などのアクセサリーが落ち着きなくはためいたり揺れたりしてどうにも収拾がつかない。
この日、浅田はフレームレートを60fpsで撮影することとした。
浅田は通常Logで撮影し、ホスプロ(ホストプロダクション)でグレーディングを煮詰めて行く。
Logとは、写真でいうところのRawデータにあたる。
グレーディングは、いわばRaw現像だ。5分の映像でも実に10,000枚近くの画像を「現像」処理することになる。
画像の編集、音源の挿入、切替効果などを加えて最終的に映像作品へと仕上げて行く。これがホストプロダクションと言われる所以である。
さて60fpsで撮影された映像を、浅田はホスプロで再生時30fpsになるようレートを落としている。
つまり、実際の動きの1/2のスピードで表現している事となる。倍速撮影とスローモーションの関係だ。
衣装もその分ゆっくりはためくし、モデルの歩みも半分のスピードになり、俄然、落ち着きと情感が増す。
浅田の情感表現の中では、60fpsで撮影し30fpsで再生するこの手法がじんわり効いてくる。
このシーンは120fpsで撮影し、30fpsにレートを落として再生している。いわば4倍速撮影だ。だからこそエモーションを揺さぶられる映像となる。
DHGレトロソフトフィルターについて
DHGレトロソフトフィルターのガラスの表面には特殊な処理を施して不規則な凹凸をつけてある。
これが光を屈折させ、特有の軟調効果をもたらす。
マルミ以外には見当たらない、ちょっとレアなソフトフィルターだ。
軟調効果はさほど強くは無いが、甘すぎず、しかしシネマのような優しい手触りで、どんな被写体でも受け入れる懐の広さを持っている。
実際、マルミの社員にも付けっぱなしにしている者も多い。
すでにお分かりの通り、シネマ調・オトナ・ノスタルジックな世界観に加え、ハイキーでポップなトーンでも表現力は変わらない。
また白くなり過ぎないので、逆光でも躊躇なく使えるところが良い。コントラストを適度に落とすため、ダイナミックレンジを広げる効果もある。
色調を変える効果は無いが、その分押しつけがましさはない。色調は、あくまでもクリエーターのセンスに任せる部分だからである。
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without Filter
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with Filter
逆光でのこの表現力。拡散光が白くなり過ぎないので、このようなシーンでもためらわずに使えるのが、DHGレトロソフトフィルターの強みだ。シャドウも黒ツブレしないできちんと質感とトーンを伝えている。浅田は「ダイナミックレンジを広げる効果がある」と表現している。
“サウダージ”を映像テーマとする浅田 譲にとって、DHGレトロソフトフィルターの、シネマのような優しい手触りが、彼の映像表現と感性にぴたりとハマったのだという。
浅田 譲は言う。
心の奥底にある感情って、必ずしもクリアなイメージではないと思うんです。
サウダージも同じです。少し胸に突き刺さるところもあるが、それほど明瞭度の高いイメージではない。心のどこかで、大切に優しくベールで包んでいるものです。それを映像に表現できるフィルターを、ちょうど探していたんです。
今回、DHGレトロソフトフィルターを使ってみて改めて気付いたのは、ある種の曖昧さや、シネマのように包み込むような柔らかさが加わることによって、僕のイメージに合ったサウダージがより明確に、映像として表現できたという事です。
浅田は自然光を生かしての撮影を得意としている。柔らかな光を、レトロソフトフィルターはさらに優しい手触りで包み込んでゆく。
このPVでは場面転換に合わせて、ビートを刻んでいたBGMがYumeyomiのコーラスに変化する。はっと軽い衝撃を受けるとともに、映像に奥行きが増す。浅田にしてやられた感が心地よい。
映像作家 / 写真家 / ドラマー
1980年大阪生まれ 神戸市在住
ミュージシャンとして活動する傍ら、ミュージシャンやダンサーのMV制作、アパレルブランドのイメージPVなどで活動の幅を広げる。“サウダージ”をテーマに、幻想的でエレガントな美しさの中に、切なさと温もりを感じさせる、独自の映像表現を得意とする。
2013年 ARTFreelance EDITOR`S CHOICE AWARD受賞
2019年 第9回「ICT(愛して)とくしま大賞」 STNet賞
2020年 三木フィルムコミッション 第5回 CM MOVIE CONTEST 優秀賞
2020年 LUMIXクリエイティブコンペティション 優秀賞
●WebSite
http://saudade-film.com/
https://www.joeasada.com/
●Facebook
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●Instagram
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(@phoograph.joe)
楽曲提供 (うみかぜ・はるかぜ):Nagipan
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https://youtu.be/YzKPtfD7ou0
楽曲提供(Two Tones) : Yumeyomi